嫡出推定等の法改正について
令和6年4月1日から、嫡出推定の制度が一部変更されます。
1 婚姻解消等の日から300日以内に子が生まれた場合であっても、母が前夫以外の男性と再婚した後に生まれた子は、再婚後の夫の子と推定する。
2 女性の再婚禁止期間が廃止。
3 嫡出否認権が、夫だけでなく、子及び母にも認められました。
4 嫡出否認の訴えができる期間が3年に伸びました。
いずれも、本コラム記載日現在はまだ適用前ですので、新旧どちらが適用されるかについて注意してください。
嫡出子というのは、婚姻中の夫婦の間に生まれた子のことです。
現行法(令和5年8月時点)では、妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する(民法772条1項)とされています。
そして、さらに、子の出生の時期によって、「懐胎」の時期を推定し、「妻が婚姻中に『懐胎』した」場合にあたるかを推定している。
婚姻成立日から200日以内に生まれた子・・婚姻前に懐胎と推定
婚姻の解消(離婚等)の日又は婚姻の取消しの日から300日以内に生まれた子・・(離婚等の前の)婚姻中に懐胎したものと推定
後者の離婚等の日から300日以内に生まれた子について、離婚等の前の婚姻中に懐胎したものと推定され、結果、前夫の子と推定されるので、それを回避するために、出生届を出さず、子が無戸籍となってしまうことがありました。
この点が改正され(施行は令和6年4月1日)、離婚等の日から300日以内に生まれた子でも、母がその間に再婚した場合、再婚後の夫の子と推定されることになりました。
これにより、母が再婚をしても、懐胎時期の推定が重複しなくなったので、女性の再婚禁止期間が廃止されました。
補足すると、現行法だと、女性が離婚等から100日以内に再婚した場合、「離婚等から200日超え」かつ「再婚から200日超え」 から 「離婚等から300日以内」の期間に出産すると、子の嫡出推定が前夫と再婚後の夫で重複するので、これを回避するために女性にのみ再婚禁止期間が設けられていました。
しかし、そもそも、DNA鑑定などが容易に使えなかった時代はともかく、現代において、再婚禁止期間を設ける意味があるのか、性別による差別ではないのか、批判も多くあったところです。
もっと以前は再婚禁止期間は6カ月だったところ、平成28年に100日に短縮され、同時に不合理な適用を避けるべく例外も設けられた経緯もありました。そして、令和6年に廃止が決まりました。
嫡出否認というのは、推定を受ける子の父が、その子について自分の子ではないとする手続きですが、これも、現状夫からのみとされていますが、子や母も可能とされ、期間も1年から3年に伸びました。
子の母は分娩の事実により明らかです。
他方、父はそうではないので、子のために、父子関係を早期に安定されようと法律が嫡出推定等について様々な規定を置いてきました。
しかし、前述のように、離婚後300日以内という嫡出推定が及ぶため、その時期に出産した母が子の出生届を出さず、子が無戸籍となってしまうような問題がありました。
そこで、婚姻解消等の日から300日以内に生まれた子は、前夫の子と推定はされるけれど、母が前夫以外と再婚した後に生まれた子は再婚後の夫の子と推定するということになりました。
なお、前期の通り、このコラム記載日現在は旧規定が適用されており、上記改正は令和6年4月1日からの施行ですので、どちらの法が適用になるかについて、ご注意ください。